お一人様が巡る旅の記録

単独行動するブログ主の備忘録 - ホテル・飛行機・観劇・その他 -

春節前には長距離列車に乗らない方がよい

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もう幾つか寝ると、お正月です。

日本のスーパーやデパートなどは12月24日の営業が終わると即座に模様替えをはじめ、25日の開店時にはお正月用品の陳列やPOPに変わります。そして三が日が過ぎたら七草粥、次は成人式、雛祭り…。

店員と販売支援はとても大変です。

 

日本は太陽暦の1月1日がお正月ですが、アジアは旧暦の1月1日、今年は1月28日がお正月(旧正月)です。

日本でも旧正月にお祝いや催事を行うところはまだ多く残っていますが、アジアは違います。

1月1日は単に年が明けただけの話で、お正月というのは旧正月のことです。

今年は1月28日、中国や台湾ではその名を「春節」といいます。

 

日本でいう大晦日(今年は1月27日)には、紅白のような番組が目白押しです。

これは大事なことですが、

アジア(昔の中華文明の影響圏)では、「春節に家族そろって」お祝いができることが重要です。

これをさせてあげられない人(会社・政府)は恨みを買うことになります。

 

 

 

 

 

中国を例にとりましょう。

中国は貧富の差がとても激しいのです。

現金収入のない内陸部から、老いた両親と小さな子供を残して夫婦で都市部や南部の工業地帯に出稼ぎに行きます。

何千キロも移動するのですから家族に何かあってもすぐには戻れません。また基本、引っ越しを許されない国ですから出稼ぎ先でケガや病気になっても保険は利きません。

雇い主に「自分は病気なので休みたい」と言うとクビにされる国です。

1年間、病気やケガに耐えて必死に働き、貯めたお金を持ってやっと家族の元に帰れる日が「春節」なのです。どれだけ特別な日か想像できますね?

 

 

北京・上海・天津・江蘇省・広東省などの大都会や工業地帯から四川省貴州省青海省黒竜江省遼寧省吉林省や周辺の自治区自治州へと向かいます。

では、何人くらいが移動するのでしょう?

移動するのは5億人です(いゃ、ほんとマジでw)。

昨年の延べ発行切符(列車・飛行機・バス・フェリー)は28億枚だそうです。

ゲルマン人の大移動なんて「大八車でのただの夜逃げ」に思えてきます。

 

 

周辺国家と一番軍事的問題を惹き起こしているのは中国だと知っていましたか?

南沙諸島を埋め立て、フィリピンやインドネシアの漁船に銃撃し、幸せの国ブータンへの領地侵入、韓国への領海侵犯。

ほんの数十年前、チベットという「国」があったのを覚えていますか?

現在、世界中でやりたい放題の中国に怖いものはありません。アメリカやEUからの抗議にはには「じゃ、おたくからモノは買わないよ」で終わり、日本やアジアには軍事挑発を繰り返します。

でもたった一つ、たった一つだけ中国政府が怖いと思っているもの。

それが「国民」なのです。

逆に言えば、もう世界のどの国にも中国を止めることはできません。

 

 

実は、春節に国民が家族のもとに帰れるかどうかは、中国共産党にとって最重要の問題なのです。春節の問題だけは、アメリカや日本程度のことなんかより最優先です。

 

数年前、大雪で列車のダイヤが大幅に狂ったことがあり、大きな駅(広州や上海)だけでなく、駅という駅が列車を待つ人であふれたことがありました。

飛行機で帰れるようなお金持ちは限られていますので、ほとんどは列車とバスを乗り継いで帰郷するからです。

「いつ列車は動くのか?」「なぜ自分たちは春節に家族のもとに帰れない?」「鉄道を管理しているのは誰だ?」「責任者はどこに居る?」

 

民衆の不満はだんだんと高まってきます。

政府が怖れるのはこれです。

「自分たちを故郷に帰せない政府など要らない」

移動するのは5億人。そして自宅で待つその家族。

10億人の不満の矛先が、地元政府、中央政府に向かったら?

 

めっちゃビビった共産党政府はある命令を下します。

はい。軍隊の出動です。

今回の軍隊の敵は「雪」でした。

「人民軍の総力を挙げて、線路・道路・滑走路に積もった雪を排除し、人民が速やかに故郷に戻れるようにせよ!」

自国民を戦車でひき殺すより気分的には楽だとは思いますが、それでも大変な任務です。

「政府は努力してますよ?」のアピールCMをこれでもか、と言わんばかりに一晩中テレビの各チャンネルで流し続け、とりあえずまだ共産党政府は無事ですねw

今でも毎年、「春節も故郷に帰らず頑張っている人々」を予防線として放送しています。

 

 

 

 

 

さて本題です。

上で、多くの人はバスや列車を使うと書きました。

春節を家族と過ごしたいのですから、間に合うような列車やバスに乗ります。

持って帰るのは1年間、必死に働いて貯めたお金と農村では手に入らない服やオモチャ。

どの国であっても親は親です。「子供たちは病気になっていないだろうか。育ち盛りだしこの服やオモチャは気に入ってくれるだろうか。学校の成績はどうだろう。この数日の休みが終わればまた1年間子供たちとも会えなくなる・・・」

複雑な心境を抱えながら定員以上の乗客を載せて列車は故郷へ向かいます。

 

中国のお正月に欠かせないものがあります。

手作りの料理(地域によって違うと思いますが、黒竜江省遼寧省吉林省などでは水餃子)と花火です。

 

中国ではお正月に爆竹を鳴らして魔を祓います。家の前で、庭で、路地で、道路でバンバン鳴らすわけです。

ホテルに泊まっていてもやかましくて寝られません。

(現在は、北京や上海などで爆竹を鳴らすことは禁止されています。テロと間違うから、とかどれだけ恨みを買いすぎているのでしょう)

 

そして最近は花火です。日本の花火の製法が逆輸入され(もともと火薬は中国ですからねw)、きれいな花火を作れるようになりました。

日本ではとうてい販売不可能な花火も売っています。36連装ロケットランチャー打ち上げ花火とか・・・。

故郷に戻る親の願いはいつも一つ。

「オレ、家に帰ったら子供たちとこの花火するんだ(笑)」

フラグ立ちまくりです。

 

広州市や東カン市など名だたる工業地帯から満員の乗客とお土産である大量の花火を載せた列車は、走る火薬庫と化して故郷に向かいます。

そして、彼らの多くはタバコを吸います。冬なので静電気も発生しやすくなります。

 

 

 

 

 

 

中国に行き始めたころ、駅の待合室には爆発四散した列車の写真がいつも掲示してありました。千切れ飛んだ人体もモザイクなしです。

 

故郷に帰りたいという殺気だった雰囲気(あれは独特です)。そして満載の火薬。

春節前の長距離列車移動は避けることにしています。

どうしても乗る必要があるなら、料金は高くなりますが「軟臥」(1等寝台車)に乗ることです。